電気と保安 2020年 冬季号 Vol.280 東北電気保安協会
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投入されなかったVCB過熱箇所7真空遮断器(VCB)の経年劣化により停電事故に至った事例を紹介します。7月中旬の12時頃、上水道のポンプ場を管理されているお客さまより、「配電線事故で停電したが、真空遮断器(以下「VCB」という)が自動投入されず、電気が使用できないので点検してほしい」と事業所に電話連絡があり、上司と同僚の3名で出動しました。約30分後に現地に到着しお客さまにお話をお伺いすると、「停電に伴い非常用予備発電機が起動した。電気が復旧したあと、本来であればVCBが自動的に投入されるはずだが投入されず困っている。一般家庭で水を大量に使用する夕方までに復旧しないと、周辺一帯で断水するおそれがある」と大変心配されておられました。VCBが投入しないとのお話でしたので、区分開閉器を開放し短絡接地器具取付け後に、VCBを取外して外観点検を実施したところ、機器内部の操作機構部が著しく過熱していました。当該機器は、使用開始からおよそ30年経過していることに加えて、その間に注油などのメンテナンスを実施していなかったため、内部の操作機構部のグリースが固着していました。そのため、VCBの操作機構部が稼働しなかったのが原因でした。お客さまから「管理している他の事業場に、同規格のVCBの予備品がある」との情報をいただいたことから、お客さまに了承をいただき、事務所にいる同僚に現地に取りに行ってもらい、届いた予備品のVCBに交換して、現地に到着してから約5時間後に復旧しました。「断水することが非常に心配だったが、迅速に対応していただきありがとうございました」と感謝の言葉をいただきました。併せて、耐用年数が経過している機器については、計画的な整備や更新が必要であることをご理解いただきました。今回の事例は、これまで何事もなく使用してきた電気機器の経年劣化による不具合で発生した事例でした。月次点検や年次点検で注意深く点検を行うとともに、VCBなどの可動する機器や部品については、定期的に注油をしていただくようお客さまにお願いしてまいります。大和事業所 坂井 亮介〔状況〕〔調査〕〔原因〕〔復旧〕高圧機器のメンテナンスの重要性を実感!〔お客さまの声〕〔まとめ〕検査員の現場報告2

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