電気と保安 2020年 冬季号 Vol.280 東北電気保安協会
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カラー展開された小物商品美しいカラー化を施された急須4組み上がった鋳型に約1500度に溶解した鉄を注ぎ、固まったら型出し、さらに黒漆の焼付。内側は釜焼き仕上げで酸化被膜をつくる。伝統工芸士がおよそ70もの工程を丹念につくり上げます。    こうしてつくられる伝統工芸品とともに、当社ではたとえば急須や鍋などの日用品については、親父の代からいち早く一部機械化した製造を行ってきました。坂 本:現在では鉄瓶や急須以外に、キッチンウエア、小物など、さまざまな製品をおつくりになっていますね。岩清水:鍋については早くからつくっていました。寄せ鍋や湯豆腐など鍋料理ができる鍋とか、すきやき鍋は昭和50年代によく出た商品です。ただその後、安価な中国製品や、ヨーロッパの高級な鋳物ホーロー鍋が出てきて、しだいに後退してしまったという状況です。進展の状態が見えるのは、海外向けの製品づくりということですね。坂 本:海外に向けた販売を強化されて、「IWACHU」が鉄器の代名詞になっているということですが、そのきっかけと製品づくりの工夫などについて教えてください。岩清水:30年ほど前にフランスの紅茶専門店さんから、カラーのティーポットをつくれないかと言われたのが始まりです。私たちは「うん?」と思いましたし、黒漆だけでやってきた職人たちにも抵抗があったんですが、せっかくのご注文だからと思い切ってやってみたんです。結果的に非常に評判がよく、当社が業界の先駆けとなり、今ではほかの企業さんもやっています。カラー化の課題は、鉄製品への新しい着色法をどうするかということでした。急須は熱湯も入れるので、耐熱性・耐久性と安全性が求められる塗料をメーカーさんと開発しました。坂 本:日本の文化、和に対する注目度も高まっていて、海外からの需要がすごいなと思いました。岩清水:私自身もびっくりしているんですが、ここ7、8年ぐらい前から売り上げの半分が輸出商品になっています。ティーポット的に使う急須、茶たく、釜敷、ぐい飲み、それでコーヒーを入れて飲んだり、使い方も自由な新しいスタイルが広がっています。坂 本:ホームページに製造工程、使用方法やお手入れまで掲載されていますが、そうした取組みのこと、また岩鋳さまの基本的な考え方について教えてください。岩清水:鉄瓶は昔は普通に日用品として使っていたので、手入れの仕方などもみんな心得ていたんですが、今は「重いし、使うのが難しい、洗うのが大変」と敬遠されてしまうという問題があります。そこで、若いお客さまでも、わかりやすくて、自然に鉄瓶など南部鉄器のよさが感じてもらえるようなホームページをつくろうということで、力を入れているところです。使い終わったら必ず乾かすとか、手入れのことも詳しくわかりやすく説明しています。    それから私たちは本社敷地内に「岩鋳鐡器館」という、鉄器のテーマパーク型施設を設けています。鉄器をつくる職人技を間近革新的な鉄器のカラー化お客さまが喜ぶことを目標に

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