電気と保安 2020年 冬季号 Vol.280 東北電気保安協会
5/24

紋様捺しの工程鋳込みの工程型出し・砂落としの工程岩鋳の刻印が捺された製品は本物の南部鉄器の証し3が社長を務め、平成12年に私が社長に就任。平成15年に創業100周年を迎え、さらに今は次の時代を目指して挑戦を続けているところです。坂 本:いま明治35年(1902年)から117年の沿革をうかがいましたが、やはり太平洋戦争の頃がいちばん試練の時代だったのでしょうか。岩清水:そうです、武器を作るために鉄は貴重な材料になったので、鉄瓶の製造も鉄の取引も禁止され、在庫の製品も全部回収されてしまいました。材料もなく結局何もできないので、親父は当時の国鉄の鋳物部品工場に勤めに出たほどでした。坂 本:戦後も再建されるまで大変ご苦労があったと思いますが。岩清水:戦後は復興の中で材料の鉄として使えるものが出てきたので、わずかずつでも昭和22、23年から鉄瓶づくりは再建できたんです。当時は鉄瓶づくりが主体でした。24年には南部鉄瓶商工業協同組合もでき、25年の朝鮮戦争特需が追い風となり、どうにか業界として再建できたんです。坂 本:その後、業績の拡大や近代化というお話をうかがいましたが、そうして発展してきた南部鉄器の特徴について教えてください。岩清水:鉄瓶というのは今でこそ特殊な商品になっていますが、昭和40年代前半までは実用品だったんです。お湯を沸かすために不可欠な実用品であり、いちばんの特徴は鉄瓶でお湯を沸かすとお湯がまろやかになるんです。使い込むほどに水の雑味が消えてまろやかなおいしさが増すということで、多くの人に愛用されてきました。    昭和40年代後半からアルミやステンレス製品などが出てきて、鉄瓶はすたれてしまいます。今は実用品というより珍しい商品として市場に出ていますが、私としてはやは坂 本:次に製品づくりについてお聞きしたいと思岩清水:基本としては、南部鉄器の400年以上前からの伝統である焼型製法というつくり方です。これは鋳型をつくり、紋様捺しを施し、り実用品として、体のためにもおいしいお湯を沸かせる鉄瓶を使ってほしいなと思っています。います。多くの工程を持つ伝統の焼型製法南部鉄器の美と技、その長い伝統を受け継いで、さらに変革への道を世界に広げていく

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る