電気と保安 2020年 冬季号 Vol.280 東北電気保安協会
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12今回は、2018秋季号(vol.275)に掲載した「高圧3kV設備を有するお客さま設備で発生した停電事故事象」の再調査に関わる、弊協会総合技術センターによる技術支援事例をご紹介いたします。高圧設備に設置される地絡過電圧継電器(以下「OVGR」という)は、高圧電路のケーブル、機器等の絶縁劣化、電路と大地間が接触して起こる地絡事故を検出する保護装置であり、組み合わせる異常検出装置(当該設備において、以下「ZPD」という)により地絡事故時に発生する異常電圧(以下「零相電圧(Vo)」という)を検出し、その零相電圧(Vo)が設定値を越えると動作するもので、遮断器等を開放(停電)させることで保護します。OVGR動作によって停電となり、点検を行うも異常が認められず、復電操作を行ったところ再度OVGRが動作した事象について、前回調査(以下「初回調査」という)を踏まえ、原因調査のため停電年次点検に併せた再調査の技術支援を行いました。(1) 3kV系設備停止中(一部処理設備除き)に3kV側OVGRが動作し、3kV主遮断器が開放(停電)していた。同様の事象が過去2回発生している。(2) 3kV設備の点検後、絶縁抵抗測定値を含め異常が認められないため主遮断器の復電操作を行ったが、 OVGR動作により3kV主遮断器が再び開放(停電)した。(3) 設備の稼働時において初回調査を行い、受電設備の外観上の不備及び設置不備がないことの確認と、各測定個所のデータを高速記録装置により同時測定し(図1)、停電点検に併せた再調査が必要と判断した。(1)3kV側OVGRの特性試験(高調波影響確認)初回調査における測定で、3kV側ZPD出力に第3高調波成分が多く見られたことから、OVGRの動作値が第3高調波の影響を受けるのか確認した。結果、メーカー管理値を超える第3調波の入力では、高調波成分が大きくなるにつれ、最小動作値が小さくなった。(2)3kV用遮断器復電操作時における零相電圧(Vo)発生確認復電操作時において、初回調査と同様の各箇所を超高速で同時測定した。測定の結果、3kV遮断器投入時に、3kV側の突入電流及び6kV側突入電流に併せ、各線間電圧の変動と零相電圧(Vo)の発生(継続時間100ms程度)を確認した(図2、図3)。また、3kV遮断器投入時において第3高調波はほぼ見られず、後述の連続測定結果から第3高調波成分は運転状態において発生が見られた。(3)零相電圧(Vo)発生レベルの連続測定通常稼働状態における3kV側ZPD出力の推移を一定期間測定した結果、設備の異常に起因しない出力値を確認しました。また、測定期間中の3kV側ZPD出力変動の最大値は、3kV側負荷が操作される時間帯において、設定値を超える零相電圧(Vo)の短時間発生を確認した。1 当該設備の概要当該お客さま設備は、3kVモーターを有するプラント設備であり、高圧6kV受電設備から6kV/3kVの連絡用変圧器(タイトランス)を介し3kV設備に送電しており、3kV側の地絡保護用にZPDとOVGRが設置されています。(図1)2 停電事故の状況3 再調査3kV設備の停電事象の再調査に関わる技術支援2

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