電気と保安 2019年 春季号 Vol.277 東北電気保安協会
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絶縁油が噴出した変圧器事故後の変圧器内部5製造工場のお客さまにおいて、変圧器の老朽化が原因で全停電となった事例を紹介します。〔状況〕陽気の良い11月初旬の午前11時過ぎ、お客さまより「工場が停電した」と電気事故受付センターに電話連絡がありました。受付センターからの連絡を受け、高圧設備の事故と判断し3名で直ちに出動しました。10分後に到着すると、お客さまは今日中に設備が稼動できるか非常に心配しておられました。〔調査〕早速、引込柱の高圧気中負荷開閉器の地絡保護継電器(GR)が地絡表示していることを確認しました。次に、受電設備の外観点検を行い、動力変圧器1台に絶縁油が噴出した跡があるのを発見しました。その動力変圧器単体の高圧絶縁抵抗測定を実施したところ、0メグオームで絶縁不良でした。他の設備は、高圧絶縁抵抗測定及び絶縁耐力試験において異常がないことを確認しました。〔原因〕変圧器は、1973年製で40年以上使用しており、負荷状況は、月次点検時の計測において定格電流の80~90%の使用状況ですが、機器の稼働状況により100%を超過していた可能性もありました。そこで、2年前の3年1回の停電年次点検時に変圧器の内部点検を実施した結果、絶縁油が汚損しており、更新のお願いをしていたところでした。原因は、変圧器の経年劣化と負荷増加による過負荷で、絶縁油の酸化汚損が進んだことにより内部で絶縁破壊を起こしたものです。〔復旧〕事故原因の変圧器を除き、午後2時頃に仮復旧しました。その後、お客さまから電気工事店に変圧器の交換工事を依頼していただき、工事への立会い、工事終了後の竣工検査を実施して午後7時頃にすべて復旧しました。また、もう1台絶縁油が汚損している変圧器がありましたが、翌年の2月に交換していただきました。「今日中に復旧できず製造ラインが動かなかったら、自社だけでなく他グループ会社に部品供給をしているため、グループ会社全体の生産がストップしてしまい、多大な損害が出るところでした」と、早く復旧できたことに感謝の言葉をいただきました。〔まとめ〕今回の事例は、お客さまが変圧器の更新計画をされている矢先に停電事故となり、設備更新の必要性について再認識したとお話されていました。今後も停電事故未然防止のために、的確に設備異常の有無を確認してまいります。指摘・指導事項の計画的な改修及び更新の必要性について、あらためて考えさせられる事例でした。柏崎事業所 吉岡 政宏製造ラインストップ!!生産の最盛期に全停電事故〔お客さまの声〕検査員の現場報告2

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