電気と保安 2019年 春季号 Vol.277 東北電気保安協会
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伐採後の引込柱周辺電線の傷4台風による全停電事故発生。引込柱付近の樹木は、広範囲に伐採することが重要と再確認した事例を紹介します。〔状況〕昨年9月上旬の夜中午後11時過ぎ、電気事故受付センターに、お客さまから「施設すべての電気が停電している」との電話連絡がありました。折しもその日は台風21号が通過する夜で、夕方から雨も風も強くなり、6千ボルトの高圧設備が停電したのではないかと判断し2名で出動しました。〔調査〕約1時間後に到着してお客さまにご挨拶した後、施設内の電灯回路・動力回路とも停電していることを確認して、キュービクル設備へ向かいました。停電時に自動起動する消火設備用の非常用発電機が起動していたことから、お客さまのご了解を得て停止させ、引込柱及びキュービクルを確認したところ、高圧気中負荷開閉器が開放(切)になっており、地絡保護継電器にも漏電を示す表示がありました。お客さまも心配しながら遠目に見つめていらっしゃいましたので、早く原因究明しなければと思い、まず、高圧設備の絶縁抵抗測定を行いました。測定値は0メグオームと、非常に低い危険な数値でした。この数値は、高圧ケーブルを含む引込柱側でしたので、すぐに昇柱して調査を行ったところ、引込柱上の高圧機器と高圧ケーブルを接続している付近の電線3本に、横一文字の傷があることを発見しました。〔原因〕引込柱付近には、何本もの杉の木が生えており、強風で枝が高圧電線に何度もぶつかったことで傷が付き、雨水を伝って漏電したものと判明しました。お客さまにご説明したところ、枝が電線を傷つけたことに大変驚かれておられました。〔復旧〕引込柱から手の届く限りの枝を伐採し、電線の傷の付いたところを絶縁テープで補修するとともに、電線相互の間隔を均等に修正し、午前2時20分、お客さまに復電することをお伝えして無事に受電いたしました。雨の中でのテープ巻き付けでしたので非常に苦労しましたが、深夜の間に復旧できたことで、「夜が明ける前に電気が使えるようになって、大変助かりました」とお客さまから感謝の言葉をいただきました。〔まとめ〕今回の事例は、台風の影響とはいえ、引込柱周辺に樹木が接近していたことが直接の原因でした。その後、同様の事故が発生しないよう、お客さまに樹木や高圧機器に近い枝を伐採していただきました。普段、電線と樹木が直接触れていなくても、台風などの強風時は、枝があおられて接触する可能性があることから、より広範囲に伐採が必要なことを再確認できた事例でした。花北事業所 阿部 忠男台風による強風!木の枝が電柱上の電線直撃〔お客さまの声〕検査員の現場報告1

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