電気と保安 2019年 冬季号 Vol.276 東北電気保安協会
8/24

東東餅のように膨れた高圧ケーブル端末部分解後の高圧ケーブル端末部全停電事故において、高い電圧を印加する試験により事故原因が判明した事例を紹介します。〔状況〕事故当日の気温は極寒の氷点下、薄暗い2月下旬の午前5時頃、老人福祉施設のお客さまから「館内が全て停電している」と弊協会の電気事故受付センターに電話連絡がありました。受付センターから連絡を受け、高圧設備の事故の可能性があると判断し同僚と2名で出動しました。約1時間後に現場に到着したところ、「電気が停まって暖房設備が使えず困った」と寒さに震えるお客さまが待っておられました。〔調査〕早速、お客さまの高圧設備の調査を開始したところ、引込柱にある高圧気中開閉器の地絡継電器に漏電したことを示す表示があり、高圧気中開閉器 (PAS)が開放(切)していました。漏電の原因を突き止めるため、高圧絶縁抵抗計で測定し数値を確認しましたが異常はありません。電柱上の設備及び地上にあるキュービクル内の変電設備の目視点検をしましたが原因が判明しないことから、事業所に応援2名と高い電圧を電気設備に印加できる試験器、高圧絶縁耐力試験装置を手配しました。40分後に到着した職員とともに、絶縁耐力試験装置を使用し高い電圧を電気設備に印加したところ、キュービクル内の高圧ケーブル端末部がまるで餅のように膨れあがりました。〔原因〕原因はここだと思い、高圧ケーブルの端末部を分解してみたところ、内部で水分が凍結していました。電柱上の高圧ケーブル端末部が劣化し、そこから浸入した水分がキュービクル内の高圧ケーブル端末部に溜り漏電したものと判明しました。〔復旧〕高圧ケーブルは弊協会他事業所で保管していた予備品、ケーブル端末部もたまたま所持していた電気工事店から借用し、電気工事店に緊急工事をお願いして約8時間後に仮復旧することができました。6「入居者が高齢ということもあり、真冬の朝早くの停電で暖房が使用できず大変困りました。早急に対応いただきありがとうございました」と感謝の言葉をいただきました。〔まとめ〕今回の事例は、状況に応じた測定器や試験器を使うことで、停電原因となった漏電箇所を突き止めることができました。また、破損した高圧ケーブルとケーブル端末部もたまたま早く手配がつき、その日のうちに仮復旧することができましたが、高圧ケーブルの手配や工事には多大な時間を要する場合もあります。今後も迅速な事故対応で、お客さまのご期待にお応えできるよう取組んでまいります。横手事業所 金森 勉真冬の早朝の停電!高圧ケーブルに水が浸入した漏電が原因〔お客さまの声〕検査員の現場報告1

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る