電気と保安 2018年 春季号 Vol.273 東北電気保安協会
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東東燃料噴射ポンプ※プランジャーブロック=燃料噴射量の調整をするものプランジャーブロック※(左から1本目、5本目が不良)4月次点検で訪問したところ非常用予備発電装置が起動しなかった事例を紹介します。〔状況〕9月上旬、ある養鶏場に月次点検で訪問したときのことです。キュービクルの点検を終了し、次に非常用予備発電装置の起動試験を実施するためスイッチを入れたところ、発電装置が起動しませんでした。故障表示が発生したことから、お客さまに状況を説明したところ、「1週間ほど前に落雷が原因で停電があった際、発電装置が起動し非常電源に切り替わった。その時は、電気が復旧した後に自動で商用電源に切り替わった」とのことでした。〔調査〕起動試験前の点検では、燃料は十分あり、バッテリー電圧の低下もなく異常は認められませんでした。燃料経路でエア(空気)が噛んでいるのではないかと思い、エア抜きの作業を行いましたが、発電装置は起動しません。このままでは、非常時に電源が確保できないことから、お客さま取引の発電機取扱会社に連絡したところ、たまたまお客さまの近くで作業していたことから1時間後に来てもらいました。燃料噴射ポンプとインジェクションの接続箇所を外していただき、エンジンキーでエンジンを回すと、燃料噴射ポンプから燃料が噴射されていませんでした。詳しい原因は、工場に持ち帰り、分解して調べないと分からないとのことで、発電機取扱会社が燃料噴射ポンプを一旦持ち帰りました。4日後、分解調査の結果、燃料噴射ポンプのプランジャーブロック6本中2本が固着しており、起動時に燃料噴射量が不足しているため、発電装置が起動しないことが判明し報告がありました。固着した部品は、可動部と固定部の隙間が1mmもないような精密部品とのことでした。なお、修理には部品の取寄せが必要で、1か月くらい時間を要すると合わせて報告がありました。お客さまに発電機取扱会社からの報告をお伝えし、復旧までお待ちいただくようになることをご説明しました。〔復旧〕発電機取扱会社の工場にて、燃料噴射ポンプの整備、燃料噴射量を調整していただいた後、約1か月後の10月上旬、弊協会も立会った中で、お客さまの現場で燃料噴射ポンプの取付けを行い、発電装置の試運転を実施しました。試運転の結果、電圧・周波数・回転数等に異常はなく、正常に運転することを確認しました。〔お客さまの声〕「発電装置が起動しないと停電があったときに電気が使えず、大変なことになるところだった。発電装置が動くようになって一安心です」とのお言葉をいただきました。〔まとめ〕今回は、月次点検で非常用予備発電装置が起動しない事象を発見し、分解調査、修理そして復旧まで停電が発生しないことで、大事に至らずにすんだ事例でした。何か異常がありましたらご連絡をお願いいたします。花北事業所 田中 智博非常用予備発電装置が起動しない!〔原因〕検査員の現場報告1

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