電気と保安 2016年 春季号 Vol.265 東北電気保安協会
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6昨年の春号(Vol.261)では、広範囲に埋設された低圧ケーブルの地絡点探査の事例を紹介しました。今回は、同じ測定器を使用して高圧ケーブルの外装の絶縁不良による金属シース遮蔽層(以下「シースアース」という。)の地絡を特定することが出来た事例を紹介します。特別高圧(66kV)受電のお客さまから、「定期保守点検時に高圧ケーブル(6kV)の絶縁抵抗測定を行ったところ、芯線と大地間の測定値に異常はないが、シースアースと大地間の測定値が著しく低下しているものが見つかりました。このままでは高圧地絡事故に発展するおそれがあるので、地絡個所を見つけていただけないか。」と弊協会の事業所に調査依頼がありました。事業所では、お客さまの構内が広く、特別高圧変電所の電気室から高圧ケーブルがケーブルラックで各工場に複雑に敷設されているうえ、地上からの高さもあることから、単独での調査が難しいと判断しました。そこで総合技術センターに支援の要請があり、出向いて調査することにしました。現場を確認したところ、調査依頼の高圧ケーブルは2本1組で、特別高圧変電所の電気室から現場の工場電気室まで約320mをケーブルラックで敷設されていました。また、ケーブルラックには他の高圧ケーブルも十数本一緒に敷設されており、目視での確認はやはり困難な状況でした。地絡点の探査は、前回ご紹介した「マーレーループ法事故点測定器(高圧ブリッジ形ケーブル法事故点測定装置)」(以下「測定器」という。)にて行いました。標準的な測定方法であるホイートストンブリッジ法の原理を応用した“マーレーループ法”では、測定に使用する導体の両方の抵抗が等しいことが必要となります。しかし、今回はシースアースの地絡点特定のため、シースアースとケーブルの芯線を使用しますが、それぞれの導体抵抗が異なるため測定データから地絡点までを特定することができません。そこで、導体抵抗が異なる場合の地絡点探査に有効なマーレーループ法を応用した“マーレフィッシャー法”により測定を行うことにしました。測定で得られたデータで地絡点を算出した結果、その箇所は特別高圧変電所の電気室から約88mのところであると特定できました。なお、地絡点の特定までは、現場到着時から約2時間を要しました。その後、特定した地絡点付近を電気工事会社に調査していただいた結果、高圧ケーブルの外装が破れてシースアースが剥き出しになり、ケーブルラックと接触しているのを発見できました。そしてすぐに高圧ケーブルの外装の応急処置を行い、高圧地絡事故を未然に防ぐことが出来ました。今回のように絶縁不良の状況が違う場合でも測定方法を変えることにより、効果的に探査することが可能です。弊協会の総合技術センターでは、事業所単独では探査が困難な電気事故等の技術支援を行っております。電気に関することでお困りのことがありましたら、お近くの事業所又は弊協会ホームページにお問い合せ下さい。〔技術支援までの経緯〕〔事故点探査方法の検討〕高圧ケーブルのシースアースの地絡点探査で技術支援〔地絡点特定まで2時間〕〔まとめ〕

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