電気と保安 2016年 春季号 Vol.265 東北電気保安協会
5/24

新維感3土門拳「江東のこども 近藤勇と鞍馬天狗」1955年撮影平等院鳳凰撮影中の土門拳(1964年)※土門拳は昭和54年に倒れてから平成2年まで、東京の虎の門病院で11年間眠り続けていました。写真提供:土門拳記念館及び土門拳作品・写真はすべて土門拳記念館さまよりご提供迫力の作品が並ぶ主要展示室 土門の写真は「風景」や「人物」などのように一つのジャンルにとどまるものではありません。伝統文化やポートレート、リアリズムに立脚した報道写真など、その種類は多岐に渡り、多くの土門ファン・写真ファンが記念館を訪れます。土門をリアルタイムで知っている世代はおそらく70歳、80歳代くらいでしょうか。しかし以前、若い写真愛好家のグループが記念館を訪れたとき、「すごいな」と感嘆の声を漏らしているのを耳にしました。そこに理屈はありません。土門の写真には、直感で語りかける強い力があるのだと思います。 写真に馴染みのない方が作品を見るときはどうしても「正しい見方をして感想を言わなくては」などという先入観があるようですが、これは間違いです。難しく考える必要はありません。「これが好き」「これにはびっくりした」と、子どものように素直な視点で見て、感じることで、酒田市が誇る写真家のことを知るきっかけになればと思っています。─ 今後、記念館としてどのようなことに取組んでいきたいと考えていますか。 最近は誰もが簡単に写真を撮ることのできる時代になってきていますが、改めてプリントしてアルバムをつくる、ということは少なくなってきているように思います。そこで当館では、撮った写真を誰もが簡単に展示できる「わたしのこの一枚写真展」を年に1回行っています。写真を見るだけでなく、自ら写真を体験していただくことで、写真の楽しみを身近に感じていただきたいですね。 新たな取組みとしては、作品について講演を行うギャラリートークを増やしたり、他の写真家とのコラボレーションなどを考えています。土門の存在感を大切にしつつ、また新たな魅力を伝えていければと思います。また写真だけではなく、音楽、お茶やお花、朗読など、様々な分野を織り交ぜた新しい切り口でイベントを企画し、飽きの来ないミュージアムづくりをしていきたいですね。─ 貴重な作品を後世に残していくために、気をつけていることを教えてください。 写真の保管で最も頭が痛いのがフィルム劣化の問題です。経年によってフィルムが変質するという現象に悩まされています。これは素材の問題のため根本的な改善は難しく、対策としては、収蔵庫の適切な空調管理により劣化を遅らせることしかありません。最近ではデジタルで取込んでデータとして保存するということもしていますが、やはり一番大切なのは原板です。いずれかの時点ではデジタル化して、残していかなければならないと考えていますが経費も相当かかります。 記念館のエネルギーはすべて電気です。照明はもちろん、空調に電力の大半を使い、写真の保管に重要な温湿度に非常に気を配っています。空調設備に不具合が起きると、繊細なフィルムやガラス板はダイレクトにその影響を受けてしまいます。保安協会さんはそのような事態にも迅速に対応してくださいますし、空調の関係で膨大になる電力消費量に関する相談にも乗っていただけるので、とても助かっています。 私どもは今後も電気設備の保守・点検に万全に対応させていただきます。省エネなどについても承りますので、ぜひお声がけください。今日は興味深いお話をお聞かせいただき、誠にありがとうございました。しい切り口でつくる美術館持・管理の難しさを支える性に訴える力をそのまま感じて─ 中には土門を知らない、というお客さまもいるのではないかと思いますが、そのような方を含め、人々を魅了する作品の力は何ですか。酒田が誇る写真家の魅力をこれからも伝え続けていくために

元のページ  ../index.html#5

このブックを見る