電気と保安 2015年 秋季号 Vol.263 東北電気保安協会
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東東応急処置をした始動器4検査員の力を集結した応急処置で、仮復旧できた事例を紹介します。〔状況〕一日の業務も終わりかけたある日の夕方5時頃、採石場のお客さまから「原料を乾燥させる送風機の高圧モーターが停止してしまいました。」と連絡がありました。その連絡を受けた私は高圧設備の故障と判断し、同僚2名とお客さまに向け出発しました。到着したところ、待ちわびたお客さまから「この送風機が止まると工場全体が止まってしまいます。早期の復旧をお願いします。」とお話がありました。〔調査〕早速絶縁抵抗計などの測定器を使用して点検をした結果、その送風機を起動させる始動器の絶縁不良と判明しました。その始動器は設置後数十年を経過しており、原因は経年劣化によるものと判断して、お客さまに始動器の交換が必要であることを報告しました。しかし、この時点ですでに夜8時をまわっていたことから、翌日に電気工事店を交えて改修の打合わせを行うことにしました。〔応急処置〕翌日、始動器は注文生産で納入まで1週間以上を要することが判明。社長さまは「1週間ですか!生産計画の変更どころか会社の存続にもかかわります。なんとか運転できる方法はありませんか」と困り果てた様子でした。古いものでしたので直せる確証はありませんでしたが「とにかく分解して出来るところまでやってみよう。」ということになりました。始動器は非常に重量があることから事業所に応援を要請、総勢4名体制で作業することにしました。お客さまからチェーンブロックを借用して、作業車に常備している工具で分解を開始。その結果、絶縁油の著しい汚損と、電気を接触させる部分の表面が荒れているのが確認できました。幸いにも電気工事店で絶縁油の在庫があり、タンク内部を洗浄して新しい絶縁油に交換。次にたくさんある接触子を金属ブラシを使って一つ一つ研磨し、接触の調整を行いました。その後、各種試験を行った結果良好となり、試運転を実施。作業開始から約8時間後の夕方に、モーターを異常無く回すことができました。「やったー!」とお客さまと一緒に大歓声を上げました。お客さまには今回の復旧は、あくまでも応急処置であることから、早期に更新されるようお願いしました。〔お客さまの声〕社長さまから「1週間はプラントを稼働できないと思いましたが、協会の技術力を駆使していただき大変助かりました。まさか翌日に再稼働できるとは。本当にありがとうございました。」と感謝の言葉を頂戴したときは、お客さまの期待に応えることができた安堵感を覚えました。〔まとめ〕電気機器にはそれぞれ寿命があります。「一般社団法人日本電機工業会」が示す受変電設備の主な機器だけでなく、電気使用場所の機器を含めた計画的な更新をお願いいたします。「検査員4名で高圧機器を緊急分解した8時間の物語」です弘前事業所 齊藤 和也検査員の現場報告1

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