電気と保安 2014年 夏季号 Vol.258 東北電気保安協会
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19 政府は4月、第4次エネルギー基本計画を決定しました。エネルギー基本計画は今後10年程度のエネルギー政策を網羅するもので、3年ごとに改定されます。これまでは電源構成の見通しも示されていましたが、今回は、原子力発電所の再稼働の先行きが見通せないことなどから、電源をベースロード、ミドル、ピークに明確に区分するにとどまりました。政府は将来のエネルギーミックスをできる限り早く定める方針です。 東日本大震災後初となる今回の計画では、原子力を「エネルギー需給構造の安定化に寄与する重要なベースロード電源」と位置付け、2012年に民主党政権が策定した「革新的エネルギー・環境戦略」で示された「2030年原子力ゼロ」の方針から転換しました。運転コストが低廉で変動も少なく温室効果ガス排出もないなどの原子力発電の長所を評価し、世界で最も厳しい水準の規制基準に適合する原子力発電所については再稼働を進めるとしています。その一方で、「原子力依存度を可能な限り低減する」こともうたっています。 再生可能エネルギーについては、従来計画である「2020年に全発電量の13.5%、2030年に約2割」という導入目標から、さらに一段上回る水準を目指すことになりました。特に2013年から3年間は、導入を最大限加速する方針です。政府の司令塔としての役割を強化すべく、再生可能エネルギーの関係閣僚会議が創設されました。 震災以降、原子力発電所の停止が長期化しているために、火力発電用の燃料調達が拡大し、その結果、電力会社7社で電気料金の値上げが実施されています。経済への影響も出始めている中で、政府が今後、どのようなエネルギーミックスを示すのか、注視していく必要があります。●今夏も電力需給ひっ迫。 無理のない節電を呼びかけ 今夏も電力需給ひっ迫が予想されるため、政府は節電要請などの対策をまとめました。 対象は沖縄を除く全国で、節電協力要請期間・時間は7月1日から9月30日までの平日午前9時から午後8時まで。数値目標は設定しないものの、無理のない範囲での節電が呼びかけられています。猛暑になったり、発電所が故障するなどして電力不足が予想される場合には、数値目標も含めて再検討することになっています。 2014年8月の電力需給見通しをみると、東日本地域の供給予備率は6.9%、中部および西日本地域は2.7%。供給予備率は3%必要とされていますが、中・西日本地域では東日本地域から電力融通を受けてようやく3.4%の予備率を確保できることになります。 政府は対策として、電力会社に対し火力発電設備の総点検を行うよう要請しています。東日本大震災以降、火力発電所はフル稼働状態が続いていますが、その約2割は運転開始から40年以上が経過した老朽設備です。 厳しい状況が予想されている中・西日本地域では、電力会社に対し需給調整契約などによる予備力の積み増しを要請。さらに、自家発電設備の導入補助、大規模な「節電・省エネキャンペーン」も展開する予定です。(提供:電気新聞)新たなエネルギー基本計画を決定―原子力は重要なベースロード電源―

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