電気と保安 2014年 冬季号 Vol.256 東北電気保安協会
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4緻密な温湿度管理が要求される麺の乾燥工程松田製粉さまの事務所には直売所が設けられている松田:白石温麺は、基本は素麺の一種です。素麺というのは、小麦粉と塩と水で作ります。ここまで原料自体は同じです。しかし一般的な手延べ素麺の場合は、製造過程で麺がくっつかないように油を使うんです。白石温麺は、油は使いません。先ほどお話した白石温麺の由来の中で、新しい作り方として始めた、ひとつのポイントだと思います。白石温麺は、油の代わりにでんぷん片栗粉を使います。これが体にやさしい麺と言われる理由のひとつです。佐藤:なるほど、父親に食べさせて病気が快方に向かったというのは、そういうことなのですね。松田:もうひとつあります。それは白石温麺の麺の長さが食べやすいということです。父親は胃を病んでいたので、食べようにも、食べ物が口に入っていかない。それで普通の麺の長さよりはるかに短くして、つるっと食べられるようにしたのです。実際、風邪をこじらせた時など、長い素麺やおそばはすすれない。自分が病気になって具合が悪い時に初めて、その大変さを感じたりするものです。白石温麺の麺の長さが3寸というのは、ちょっと体調が悪い時でも食べやすい、そういう意味でも温かい心で作った長さなのかなと思います。「離乳食にも使いやすいですね」と言われることもあります。そんなことをお聞きすると、ほんとうにやさしい食べ物であり、やさしい長さなんだなと実感します。佐藤:製造にあたって気を使っている点や苦労なさっている点はございますか。松田:長年作り続けていますが、季節ごとに空気の乾燥状態、温湿度が違うので、麺を練る時の水分や時間配分、そして麺の乾燥には細心の注意が必要です。熟練した職人の、技と知識と勘が大切になってきます。大きく言うと、空気が乾燥する冬場と、じめじめした梅雨の時は、まったく作り方が違ってきます。さらに季節ごとに、一日ごとに、そして時間ごとにも、温湿度が微妙に変化する。それに対して微調整が必要になるので大変です。麺の乾燥がちょっとでも進み過ぎると、茹でた時に粉の方に戻る傾向があって、短く切れたり、縦に割れてしまったりします。佐藤:工場を見せていただいた時に、乾燥の部屋が3つありました。真ん中の部屋がいちばん暑かったのですが、かなり湿気も感じました。松田:そうです、単純な乾燥だけではダメなんです。ただ乾燥させるのではなく、湿度を与えながら乾燥させるという非常にデリケートなやり方が必要なんですね。麺の太さによっては、表面だけ水分を抜いても、真ん中にはまだ水分が残っているという状態になります。それではダメで、全体的にバランス良く乾燥と湿度が合わないといけない。そこが難しいところです。佐藤:松田製粉さんは、温麺の他にうどん・そば・ごま・くるみなど非常に幅広い製品をお作りのようですが、これらは以前から作っているのですか。松田:そうですね。製粉だけしていた時代に、温麺の粉だけではなく、きなこ・こうせんなども製造して熟練の職人技で行う練りと乾燥伝統の製品と、新しい製品開発

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