電気と保安 2014年 冬季号 Vol.256 東北電気保安協会
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3第15代白石城主 片倉信光氏から贈られた色紙水車の力を利用して製粉していた時代の名残快方に向かった。そのことが殿様の耳にも伝わって献上させていただいたところ、親孝行を褒めてもらい、「温かい心の麺」ということで「温麺」になったと言われています。佐藤:なるほど、温かい心の麺という意味なんですね。温かい麺とか、温かくして食べましょうという意味ではないんですね。松田:そうなんです。普通皆さんそのように思われますが、心の優しさと温かさを褒め称えていただいた麺ということなんです。この由来をご説明申し上げないと、温かい麺としか受け取ってもらえないことが多いですね。白石温麺は懐が深いといいますか、心の広い人が始めたためか、一子相伝ではなく城下のいろいろなところに広がって伝わったのは、非常によかった。おかげで当社でも作らせていただいているので、大変ありがたいことだと思っています。同じ白石温麺を作るのにも、それぞれが工夫を凝らして、おいしい、温かい味を作ろうと精進しています。佐藤:白石温麺が江戸時代から、この白石に根付き、人々に親しまれてきたという歴史は、地域のひとつの大きな財産でもありますね。御社には、白石片倉家からいただいた大切なものがあると聞きましたが。松田:そうです。片倉家15代の信光氏から当社のために書いていただいた色紙です。信光氏は白石の伝統的な産業や工芸を非常に大切にして振興に力を入れた方でした。色紙には『まごころで つくるうーめん だれもすき』と書かれています。いちばん上の字をつなげると「まつだ」になります。非常に工夫を凝らして書いてくださったものです。佐藤:松田製粉さんには水車がありますが、製粉所が盛んになった背景には水車、あるいは水も関係があるんでしょうか。松田:まさしくその通りです。白石温麺の原料は至ってシンプルですが、最も大事なのは清涼な水です。白石には、蔵王の雪解け水という地の利がありました。清流が白石市内に流れ込み、お殿様もそういうものを利用しての産業奨励をなさったと思います。縦横無尽にきれいな水が流れ、京都のように生活用水の水路が路地の奥まで通じていて、お隣同士で仲良く使ったりしていました。そして製粉業者は水車で製粉したわけです。かつては白石市内に大小合わせて130以上も水車があったと聞いています。佐藤:今、原料というお話がありましたが、白石温麺は小麦粉と水と塩が原料で、それ以外は混ぜないと聞いていますが。生活用水に使っていた蔵王の水「温うー麺めん」の名に込められた想いを大切に、ていねいな技術を活かして作る製粉・製麺の老舗。

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